俳句書き写しの自主学習に-春の俳句
小学校の教科書等教材でよく取り上げられる作者の春の俳句を集めてご紹介します。
俳句は難解なもの、大人っぽい内容のものなどもありますが、ここでは、小学生のお子さんが読んで、意味をなんとなく感じ取ることができそうな内容のものを集めたつもりです。
俳句に関する自主学習ノートの記事は、ほかにもいろいろあります。書き写し、音読などの自主学習にご利用下さい。
春の俳句
作者別に、春の俳句を紹介します。
松尾芭蕉の春の俳句
松尾芭蕉(まつお ばしょう)
古池や蛙飛びこむ水の音
ふるいけや かわずとびこむ みずのおと
季語「蛙」
雲雀より空にやすらふ峠かな
ひばりより そらにやすらう とうげかな
季語「雲雀」
山路きて何やらゆかしすみれ草
やまじきて なにやらゆかし すみれぐさ
季語「すみれ草」
梅が香にのっと日の出る山路かな
うめがかに のっとひのでる やまじかな
季語「梅」
明ぼのやしら魚しろきこと一寸
あけぼのや しらうおしろき こといっすん
季語「しら魚」
行く春や鳥啼き魚の目は泪
ゆくはるや とりなきうおの めはなみだ
季語「行く春」
淋しさや華のあたりのあすなろう
さびしさや はなのあたりの あすなろう
季語「華」
四方より花吹き入れて鳰の海
しほうより はなふきいれて におのうみ
季語「花」
※におのうみ=琵琶湖
与謝蕪村の春の俳句
与謝蕪村(よさ ぶそん)
草霞み水に声なき日暮かな
くさかすみ みずにこえなき ひぐれかな
季語「草霞み」
はるさめや暮れなんとしてけふも有り
はるさめや くれなんとして きょうもあり
季語「はるさめ」
春雨やゆるい下駄貸す奈良の宿
はるさめや ゆるいげたかす ならのやど
季語「春雨」
うつつなきつまみごころの胡蝶かな
うつつなき つまみごころの こちょうかな
季語「胡蝶」
椿落ちて昨日の雨をこぼしけり
つばきおちて きのうのあめを こぼしけり
季語「椿」
春の水すみれつばなをぬらしゆく
はるのみず すみれつばなを ぬらしゆく
季語「春の水」
几巾きのうの空のありどころ
いかのぼり きのうのそらの ありどころ
季語「几巾」
※いかのぼり=凧 たこあげ
雁行きて門田も遠く思はるる
かりゆきて かどたもとおく おもわるる
季語「雁」
ゆく春やおもたき琵琶の抱きごころ
ゆくはるや おもたきびわの だきごころ
季語「ゆく春」
花を踏みし草履も見えて朝寝かな
はなをふみし ぞうりもみえて あさねかな
季語「花」
むき蜆石山のさくら散りにけり
むきしじみ いわやまのさくら ちりにけり
季語「さくら」
箱を出るかおわすれめや雛二対
はこをでる かおわすれめや ひなについ
季語「雛」
小林一茶の春の俳句
小林一茶(こばやし いっさ)
霞む日や夕山かげの飴の笛
かすむひや ゆうやまかげの あめのふえ
季語「霞む」
鳴雲雀人のかおから日の暮るる
なくひばり ひとのかおから ひのくるる
季語「雲雀」
うつくしや雲雀の鳴しあとの空
うつくしや ひばりのなきし あとのそら
季語「雲雀」
ゆさゆさと春が行くぞよのべの草
ゆさゆさと はるがゆくぞよ のべのくさ
季語「春」
雀の子そこのけそこのけお馬が通る
すずめのこ そこのけそこのけ おうまがとおる
季語「雀の子」
塗下駄の方へと桜ちりにけり
ぬりげたの ほうへとさくら ちりにけり
季語「桜」
正岡子規の春の俳句
正岡子規(まさおか しき)
長閑さや障子の穴に海見えて
のどかさや しょうじのあなに うみみえて
季語「長閑さ」
あたたかに白壁ならぶ入江かな
あたたかに しらかべならぶ いりえかな
季語「あたたかに」
胡蝶飛び風吹き胡蝶又来る
こちょうとび かぜふきこちょう またきたる
季語「胡蝶」
一桶の藍流しけり春の川
ひとおけの あいながしけり はるのかわ
季語「春の川」
故郷はいとこの多し桃の花
ふるさとは いとこのおおし もものはな
季語「桃の花」
たらちねの花見の留守や時計見る
たらちねの はなみのるすや とけいみる
季語「花見」
※たらちね=母
高浜虚子の春の俳句
高浜虚子(たかはま きょし)
そこを行く春の雲あり手を上げぬ
そこをゆく はるのくもあり てをあげぬ
季語「春」
蓼科に春の雲今動きをり
たてしなに はるのくもいま うごきおり
季語「春」
大空に春の雲地に春の草
おおぞらに はるのくもちに はるのくさ
季語「春」
春雨のかくまで暗くなるものか
はるさめの かくまでくらく なるものか
季語「春雨」
春雨の音滋き中今我あり
はるさめの おとしげきなか いまわれあり
季語「春雨」
ただ霞む春の山あり遠眼鏡
ただかすむ はるのやまあり とおめがね
季語「春の山」
蝶々のもの食ふ音の静かさよ
ちょうちょうの ものくうおとの しずかさよ
季語「蝶々」
斯く迄に囁くものか春の水
かくまでに ささやくものか はるのみず
季語「春の水」
音たてて春の潮の流れけり
おとたてて はるのうしおの ながれけり
季語「春の潮」
蛤の薄紫に乾きけり
はまぐりの うすむらさきに かわきけり
季語「蛤」
大空の鏡の如きさくらかな
おおぞらの かがみのごとき さくらかな
季語「さくら」
草餅の黄粉落とせし胸のへん
くさもちの きなこおとせし むねのへん
季語「草餅」
その他作者の春の俳句
夏目漱石(なつめ そうせき)
鳩鳴いて烟のごとき春に入る
はとないて けむりのごとき はるにいる
季語「春」
腸に春滴るや粥の味
はらわたに はるしたたるや かゆのあじ
季語「春」
ちらちらと陽炎立ちぬ猫の塚
ちらちらと かげろうたちぬ ねこのつか
季語「陽炎」
濃かに弥生の雲の流れけり
こまやかに やよいのくもの ながれけり
季語「弥生」
雀きて障子にうごく花の影
すずめきて しょうじにうごく はなのかげ
季語「花」
幸田露伴(こうだ ろはん)
春深し牛むらさきに野の烟る
はるふかし うしむらさきに ののけむる
季語「春深し」
種田山頭火(たねだ さんとうか)
この道しかない春の雪ふる
このみちしかない はるのゆきふる
季語「春の雪」
蝶ひとつ飛べども飛べども石原なり
ちょうひとつ とべどもとべども いしはらなり
季語「蝶」
子連れては草も摘むそこら水の音
こつれては くさもつむそこら みずのおと
季語「草」
室生犀星(むろう さいせい)
うすぐもり都のすみれ咲きにけり
うすぐもり みやこのすみれ さきにけり
季語「すみれ」
おそはるの雀のあたま焦げにけり
おそはるの すずめのあたま こげにけり
季語「おそはる」
久保田万太郎(くぼた まんたろう)
春雪のふりしきる際ありにけり
しゅんせつの ふりしきるさい ありにけり
季語「春雨」
蝶ひくし青葉ぐもりという曇り
ちょうひくし あおばぐもりと いうくもり
季語「蝶」
したたかに水をうちたる夕ざくら
したたかに みずをうちたる ゆうざくら
季語「夕ざくら」
豆の花海にいろなき日なりけり
まめのはな うみにいろなき ひなりけり
季語「豆の花」
あたたかや煮あげて独活のやや甘く
あたたかや にあげてうどの ややあまく
季語「独活」
芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
薄曇る水動かずよ芹の中
うすぐもる みずうごかずよ せりのなか
季語「芹」
古草にうす日たゆたふ土筆かな
ふるくさに うすびたゆたう つくしかな
季語「土筆」
他にもたくさんの春の俳句があります。
自主学習ノートの作り方例
この資料を使って、たとえばこのような自主学習ノートを作ることができます。
この資料について
著作権が消滅した作品だけを集めて掲載しています。
現代かなづかいに表記をあらためているものがあります。常用漢字程度の漢字は使っていますが、小学生の自主学習用として、読み方、書き方が難しいと思われる漢字はひらがなで書いているものもあります。
表記について、厳密なルールに従って作成してはいません。小学生の自主学習用資料としてお使い下さい。